Patagonia 2005/12/23⇒2006/1/8 |
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今から数万年前、南北アメリカ大陸とアジア大陸は地続きだった。その時代は氷河期という名が示すとおり、水が氷河の形で陸地に蓄えられた結果、海水面が低下して水深の浅いベーリング海峡は干上がっていたと考えられるからだ。 その陸続きになったベーリング海峡を渡って、僕たちの祖先は新大陸に向けてはるかな旅を始めた。コロンブスの新大陸発見から遡ること数万年、グレート・ジャーニーの始まりだ。 吹雪舞うアラスカの原野、砂埃舞う北米の荒野、中南米の密林、焼け付くような太陽。まだ誰の目にも触れたことのない風景の中を彼らは旅した。ある者はそれぞれの場所を約束の地と定め、そこで一生を終えただろう。だがある者は何かに突き動かされるように、未知の土地へと旅を続けた。旅の途中で病に倒れた者もあったかも知れない。 そうやって何世代にも渡る旅を続けた彼らは、やがて南アメリカ大陸最南端の地、パタゴニアに到着した。今からおよそ1万3千年前のことだったと考えられている。その先は南極へと続く「吠える海」ドレーク海峡。彼らの旅はそこで終わったのだ。 彼らが数万年をかけて旅をした行程を、現代の旅人はわずか40時間程度で旅する。彼らがかけた歳月に比べれば一瞬ともいえる時間だ。彼らが目にした風景と現代の旅人がジェット機で飛んだ風景とは、同じ風景であっても異なるものかも知れない。だが分刻みの日常に追われる僕たちにしてみれば、はるかな風景であることには変わりはない。 | ||
(チリ側パタゴニアを代表する景勝地、パイネ国立公園にて。中央に聳えるのはパイネ山塊最高峰、パイネ・グランデ。脇に見える滝はサルト・グランデ) |
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チリ側パタゴニアの玄関口、プンタ・アレイナスのアルマス広場にあるマゼラン像。てっぺんで大砲に跨ってふんぞり返っているのがマゼラン。その下の台座に腰掛けているのがパタゴニア先住民族、アラカルフ族の漁師。 このアラカルフ族の足に触れると、航海を無事に終えることが出来るという言い伝えがあるらしい。私も早速そのでかい足に触れてみる。みんな同じ事をするらしく、足先だけ異様な光沢を放っている。 | ![]() |
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アルゼンチン側パタゴニアの景勝地、エルチャルテン村郊外の風景。この道を進むとその先にそびえるのが名峰、フィッツ・ロイ。 写真だけみると絶景だが、実際は荷物運搬用に通る馬の排泄する馬糞が道中いたるところに転がっているのだ。コイツが出すニオイがまたすごく、それを狙ったハエのデカさもまた超弩級。ついでにニンゲンもターゲットとするらしく、始終まとわりついて実に鬱陶しい。いやはや、本当の自然というものは、単に「キレイねえ」だけで終わらないのだ。 馬はかなり頻繁に通っており、馬用の道が専用に設定されているほど。写真はそのための人馬分離標識。 | ![]() |
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遠くを見つめるグアナコ。パイネ国立公園アマルガ公園管理局の近くで。 この私の見知らぬ生き物は、私の見知らぬ場所で、何を見、何を想っているのであろうか。 |
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パタゴニアの大地は氷食地形である。やわらかい地面はことごとく氷河によって削られ、凹凸の少ない、なだらかな大地となる反面、「私は何としても山である。誰が何と言おうと山である」という頑固な岩ほどその輪郭が研ぎ澄まされ、こんな風にその鋭さを際立たせるのだ。 |
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奇跡のように美しい湖、ペオエ湖。湖水が白く濁っているのは上流に氷河がある証拠。氷河によって岩がパウダー状に削られ、水中でも沈殿せずに漂うためこんな美しい青みを帯びた乳白色になるらしい。 |
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パタゴニア特有の雲、レンズ雲がパイネの山々にかかる。 山腹にぶつかったパタゴニアの強い風が一気に上昇、断熱膨張、凝結して雲となるのだ。 |