北風に追われ・・・

  ベンガル湾の東岸より、地理的には殆どミャンマーといったところに、インド領アンダマン諸島という南北に連なった島々がある。
  2004年春頃だったかのNHK特集で、その島々に暮らす象と象使いの生活を追ったドキュメンタリーが放送されているのを偶然見た。彼らは森で木を運び出す仕事をしているのだが、材木を運搬するためには島と島を隔てる海を渡らねばならない。驚いたことに彼らはそのまま象を泳がせ、海を渡って材木を運んでいるらしい。

  深いブルーに包まれた海の中を器用に泳ぐ象(象かき?)、これを下から撮った画面は神秘的で美しく、是非ともこの眼で見たいと思った。そして年末の休み予定が決まるや否や私はHISに出向き、そこまでの航空券を手配した。アンダマンに行くには船便もありソイツにもココロ惹かれるものがあるのだが、何せ3泊4日の船旅になるというのでリーマンには辛く、JetAirwaysというインド国内線でチェンナイから飛ぶことにした。

  出発は2004年のクリスマス。天気もよく、関空を飛び立つと道中はつつがなく進み、26日昼過ぎには今回の旅のゲートウェイとなるチェンナイ空港に無事降り立つことが出来た。そして街の中心に向かう電車に乗り込み、「いやはや、結局やっぱりまたこの国に来ることになりましたなぁ」などと一人つぶやきながら風に吹かれていた。この電車はニッポンの通勤電車に似た構造なのだが、こちらはでかい扉を開けっ放しで突っ走るという点で文化の違いというものを感じさせてくれる。この国では何事もが豪快なのだ。

  だがそういう暢気な気分は、予想外の事態によって中断された。スマトラ島の端で大地震が置き、沿岸諸国に津波が押し寄せているという。何でもアンダマン空港は閉鎖されたというではないか。リコンファームを忘れていた私は慌ててジェット・エアウェイズのオフィスに駆けつけた。案の定飛行機は飛ばないという。

  宿に戻って私は考えた。チェンナイの様子はまったく平常だが、海岸部は津波の被害が出ているようだ。このまま旅を続けるのは難しいかもしれない。だがせっかくここまで来たのに帰ってしまうのも悔しい気がする。とりあえず南インドの海岸部は避けて、2週間適当に旅してくることにしよう…。こういうワケで目的を失ったインドふらふら旅が始まったのです。
 
 
エローラ石窟群
  インド中央、アウランガバード近郊にあるエローラ石窟群。そのなかでも最大のカイラーサナータ寺院の遠景。みるからに巨大な構造物だが、単一の岩盤を石ノミだけで彫り上げたというから驚く。工事は何世代にもわたって延々と引き継がれ、完成までに100年を要したという。
 
カイラーサナータ寺院
  カイラーサナータ寺院の内部。くどいようだが、これを一つの岩盤から彫りぬいたのですよ。そこにあるゾウの像なんか彫りぬきながら、職人たちは何を想像していたのだろう。ニンゲンってすごいなあ。
 
おお、インド人がいっぱいだ
  写真をとりながらうろうろしていると、インド人(高校生ぐらいか)に囲まれ、質問攻めにあう。みんなニッポン人にフレンドリーだ。
 
漁をする人々
  ケーララのバックウォーター(水郷地帯)で漁をする人々。豊かな漁場なのだろう、こうやってあちこちで網を打つ姿が見られる。海岸線が入り組んでいるせいか、この辺は津波の影響も殆どなかったようだ。
  昼飯にここで捕れる魚をご馳走になったが、ボリュームのある白身魚で大変ウマかった。
  ついでに日本人ってことで、「スシ」にもできるが食うか?と訊かれる。何が出てくるかコワかったのでそれは遠慮させてもらう。一体どんなモノなのか興味はあるが、出てきたからには食わねばならんしなあ…
 
岸辺の風景
  バックウォーター岸辺の風景。こんなふうに、でっかい椰子の木がにょきにょき生えてる。こいつの実をでかいナタで叩き割って飲むジュースが、また格別にウマいのだ。
 
バックウォーターの夕陽
  ケーララ・バックウォーターに沈む夕陽。クイロンを出発したのは今朝9時、8時間の船旅も終わりに近く、そろそろ終点のアレッピーだ。
 

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