Cinema4
何が哀しいかって?そりゃ哀しいことがまるで思い浮かばないことさ

自転車泥棒 1948年イタリア ビットリオ・デ・シーカ
  少年にとって自転車というのは魔法の乗り物だ。好きなところに走るよりもずっと早く連れて行ってくれる。しかも乗り心地は風を切って爽快だ。ついでに親父の仕事の役にも立つし、これを魔法の乗り物と言わずして何と言おう。
  しかしその魔法の乗り物はそこら辺の薄汚いおっさんいあっけなく盗まれ、魔法は消えてしまう。少年は知る。この世には魔法なんてないんだ。
  そうだ少年、この世には魔法なんてないのだ。泣くな少年、闘え少年。
 
太陽がいっぱい (Plein Soeil) 1960年 仏・伊 ルネ・クルマン
     
 
道(la strada)1954年・伊 フェデリコ・フェリーニ
  この映画を見て泣いたという人は多い。だが私は泣けなかった。だって腹が立ちませんか、「何でジェルソミーナが死ななきゃならんのだ!」って。
  ザンパノはひでえ奴だってのは素直な印象としてあるんだけれど、この映画をもう一度観直すと、こいつ同じ事を何度も繰り返しているんじゃないかという不安な気持ちになった。
  ひょっとしてローザも同じようにして死んだんじゃないかって。
 
ガタカ 1997年 アメリカ アンドリュー・ニコル


  子供の頃からロケットの打ち上げシーンというのは、とにかくテンションの高くなる瞬間だった。NHKで生中継されたスペースシャトルの初飛行を、ワクワクするような気持ちで見ていた夜のことを今でもよく覚えている。SRBが吐き出すオレンジ色の焔とともにコロンビア号の姿がかすんでゆく光景に、あの青い空の彼方に自分も行ってみたいと憧れていたのは、多分僕だけではないだろう。

  それから随分な時間が経ってから見た映画の中で描かれているロケット打ち上げシーンは、オービターの形は同じなのに、子供の頃に見たそれとはだいぶ違ったものになっていた。その理由は、映画のストーリーが哀しい物語だからという訳だけでもないような気がする。

  あれから多くの時が過ぎ、あの日の少年は憧れていた場所とはずいぶん違った場所を彷徨っている。結局あの青い空の向こうには何も無かったのか、それとも単に背が届かなかったのか。いやそもそも少年が空を見上げていたのは、単に足元を見るのが怖かっただけなのかも知れない。それでもあの日あの青い空の向こうに憧れていた気持ちは、大切にしたいと思う。

(c)NASA,NASDA
 
冬の旅 1985年フランス アニエス・ヴァルダ
  タイトルを見ただけでは、幻想的な美しい旅を描いた映画を想像してしまいますが、実はフランスの片田舎のどこにでもありそうな日常的な風景を背景にした、非常に地味で寂しい作品です。何処にも行き場のない少女が放浪の果てに悲しい結末を迎えるまでの様子を、とにかく低いテンションで淡々と描きます。重いテーマを突き放したような視点から描く姿勢は観客を不安にさせ、不安になった観客はこの映画に意味を見つけようと必死になります。
  この映画を見ると観客は主人公モネの、ひいては自分自身の生と死の意味について考えさせられますが、そんな重い問いかけに対する答えがそう簡単に出るはずもなく、また出せたとしてもそれは結局のところ幻想です。だから映画を見終わると何処にも行き場のない寒くて寂しい感情が残り、何だか無性に暖かいものに触れたくなります。
 
陽のあたる場所 (A Place In The Sun) 1951年アメリカ ジョージ・スティーバンズ
  
 
ラスト・ショー (The Last Picture Show) 1971年アメリカ ピーター・ボグダノヴッチ
  ライオンのサムが死んだ。サムはみんなのヒーローだった。
  サムの死にあわせて、みんなの何かが終わった。アメリカ西部の町に残る、西部開拓時代の夢が
 
モンスター (MONSTER) 2004年アメリカ(ギャガ、松竹)パティ・ジェンキンス
  改めて言うことでもないが、この世界というのは基本的に不公平だ。

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